川崎型森を育む健康な家 - みやぎ版住宅・川崎町型








川崎型森を育む健康な家 一号モデル住宅(みやぎ版住宅・川崎型)の特徴一号モデル住宅の特徴その1




















一号モデル住宅の特徴その1



(1) 木材の歩留まりを上げるようにしています。
まず、可能な限りムク材を使います。構造材、造作材はもちろん、下地材も、仕上げ材も家具材もムク材を使います。
そして原木を使い切るようにしています。構造材として使う芯持ち材を挽いた端材から、無駄なく板材や造作材を挽いて、それらをすべて使うようにします。このような方法は、市場でそれぞれの流通材を買い集めるのではなく、地域の原木を地域の製材所で挽くという産直型の場合は価格上のメリットが出ます。大径木から大量の同寸材を生産する方式は製材作業に限ればコストは下がり、均一な製品を得ることができますが、無駄になる端材や運送コストは馬鹿にならず、社会的なコストとして跳ね返ってきます。
川崎町は戦後造林の杉林が圧倒的に多い町です。戦後植林された40年材程度の杉も上手に使う工夫が必要とされています。モデル住宅は化粧構造材にも、大引材にも、羽柄材にも、床材にも家具材にもこれらの杉材を使っています。
端材の板は大変安く入手できます。これらを屋根板などに使うだけではなく、本実加工をして室内の仕上げ材にも使っています。その結果合板を一切使わず、住み手と環境によりやさしい住まいにすることもできます。
建築用材として使い切れない木材の利用も試みています。モデル住宅には薪ストーブが設置されており、現場から出る端材はすべてその燃料となります。のこくずは畑に散布したり、家庭の生ゴミの発酵処理に利用します。
川崎町の製材所では、端材をチップ化して畜産農家に引き取ってもらい、ふみ藁の代わりにしたり、排泄物の堆肥化に利用してもらっています。将来は生ゴミやほかの有機廃棄物も含めたバイオマス技術を地域ぐるみで確立して、環境悪化を招くことなく町全体の廃棄物処理費を下げる工夫も必要でしょう。また薪を燃料として利用できる場合はそのまま利用するとしても、将来はチップやペレットを作ることによって燃料としての利用を拡大したり、木炭にして利用したりして、森林資源全体の有効利用率を上げることにより、建築用材のみへの価格転嫁を少なくする工夫も必要でしょう。

(2) 天然乾燥材を使っています
現在は木造住宅にも工業的な発想を持たせすぎているため、長い年月を考えればむしろ強度低下を招くといわれているほど乾燥させる風潮があります。高い温度で急激に乾燥させれば木を殺すといわれています。
川崎型は、山で「葉枯らし」、製材所で「原木枯らし」、ゆっくり手加工で「製品枯らし」、上棟してしばらく放置して「現場枯らし」とそれぞれの過程でゆとりを持って計画的に天然乾燥できるシステムを確立して、木材乾燥のために石油を燃やして地球温暖化を促進し、一立米あたり一万円以上ものコスト負担をしないで済むようにします。
完成してからも乾燥は進みますから、見え掛りの柱や梁にひびは入りますが。

(3) 今、そこにある木を使っています
幸い、川崎町には製材所があります。チップ加工もしているためさまざまな木が集まってきます。建築設計図と大量の原木を見比べながらより安くて合理的な木材を使うことが可能です。規格寸法のものだけを使ったり、最小断面寸法のものだけを使ったりするのではなく、材木置き場にあるたくさんの木を見て、建物のイメージをより良くふくらますことができます。
モデル住宅は、当初は南側の面は二本の柱で支える予定でしたが、高さ40センチの断面の取れる樅ノ木の丸太を見つけたので、2間半を柱なしの構造とし、大きなガラス面を実現することができました。
そのほか、梁材には杉、松、水木、樅など、土台には栗、ヒノキ、唐松など、化粧材には杉、栗、ケヤキ、桐などを適材適所に使っています。
産直型は、長物や、大断面のものや、さまざまな樹種を使う場合には有利なので、ダイナミックな構造美を比較的安価に堪能できるのです。
材木置き場にないものは前の年の冬前に注文すれば葉枯らししたものを翌夏には使用することができます。ですから、工事する前の年に設計図を完成させて、冬に木材を調達するのが達人の道です。