1号モデル住宅(みやぎ版住宅・川崎型)の特徴

 

 目次

1号モデル住宅の特徴
(1) 木材の歩留まりを上げるようにしています。
(2) 天然乾燥材を使っています
(3) 今、そこにある木を使っています
(4) 節だらけの家です
(5) 建材類も地元でつくります。
(6) 基礎断熱をして床下オンドル暖房をしています。
(7) 床下に木炭を敷いています。
(8) 床下を更に利用しています
(9) 見てくれだけのためには手間をかけません。
(10) 塗装をしません。
(11) 板材以外の仕上げも天然素材です。
(12) ゴミが出ません。
食事と住まい
木材の値段 その一「外材はなぜ安い」
木材の値段 その二「国産材はなぜ高い?」
川﨑町の森林の現状


川崎型住宅のデータ

一号モデル住宅の特徴その1

(1) 木材の歩留まりを上げるようにしています。
まず、可能な限りムク材を使います。構造材、造作材はもちろん、下地材も、仕上げ材も家具材もムク材を使います。
そして原木を使い切るようにしています。構造材として使う芯持ち材を挽いた端材から、無駄なく板材や造作材を挽いて、それらをすべて使うようにします。このような方法は、市場でそれぞれの流通材を買い集めるのではなく、地域の原木を地域の製材所で挽くという産直型の場合は価格上のメリットが出ます。大径木から大量の同寸材を生産する方式は製材作業に限ればコストは下がり、均一な製品を得ることができますが、無駄になる端材や運送コストは馬鹿にならず、社会的なコストとして跳ね返ってきます。
川崎町は戦後造林の杉林が圧倒的に多い町です。戦後植林された40年材程度の杉も上手に使う工夫が必要とされています。モデル住宅は化粧構造材にも、大引材にも、羽柄材にも、床材にも家具材にもこれらの杉材を使っています。
端材の板は大変安く入手できます。これらを屋根板などに使うだけではなく、本実加工をして室内の仕上げ材にも使っています。その結果合板を一切使わず、住み手と環境によりやさしい住まいにすることもできます。
建築用材として使い切れない木材の利用も試みています。モデル住宅には薪ストーブが設置されており、現場から出る端材はすべてその燃料となります。のこくずは畑に散布したり、家庭の生ゴミの発酵処理に利用します。
川崎町の製材所では、端材をチップ化して畜産農家に引き取ってもらい、ふみ藁の代わりにしたり、排泄物の堆肥化に利用してもらっています。将来は生ゴミやほかの有機廃棄物も含めたバイオマス技術を地域ぐるみで確立して、環境悪化を招くことなく町全体の廃棄物処理費を下げる工夫も必要でしょう。また薪を燃料として利用できる場合はそのまま利用するとしても、将来はチップやペレットを作ることによって燃料としての利用を拡大したり、木炭にして利用したりして、森林資源全体の有効利用率を上げることにより、建築用材のみへの価格転嫁を少なくする工夫も必要でしょう。

1号モデル内観2階

1号モデル内観2階

(2) 天然乾燥材を使っています
現在は木造住宅にも工業的な発想を持たせすぎているため、長い年月を考えればむしろ強度低下を招くといわれているほど乾燥させる風潮があります。高い温度で急激に乾燥させれば木を殺すといわれています。
川崎型は、山で「葉枯らし」、製材所で「原木枯らし」、ゆっくり手加工で「製品枯らし」、上棟してしばらく放置して「現場枯らし」とそれぞれの過程でゆとりを持って計画的に天然乾燥できるシステムを確立して、木材乾燥のために石油を燃やして地球温暖化を促進し、一立米あたり一万円以上ものコスト負担をしないで済むようにします。
完成してからも乾燥は進みますから、見え掛りの柱や梁にひびは入りますが。

(3) 今、そこにある木を使っています
幸い、川崎町には製材所があります。チップ加工もしているためさまざまな木が集まってきます。建築設計図と大量の原木を見比べながらより安くて合理的な木材を使うことが可能です。規格寸法のものだけを使ったり、最小断面寸法のものだけを使ったりするのではなく、材木置き場にあるたくさんの木を見て、建物のイメージをより良くふくらますことができます。
モデル住宅は、当初は南側の面は二本の柱で支える予定でしたが、高さ40センチの断面の取れる樅ノ木の丸太を見つけたので、2間半を柱なしの構造とし、大きなガラス面を実現することができました。
そのほか、梁材には杉、松、水木、樅など、土台には栗、ヒノキ、唐松など、化粧材には杉、栗、ケヤキ、桐などを適材適所に使っています。
産直型は、長物や、大断面のものや、さまざまな樹種を使う場合には有利なので、ダイナミックな構造美を比較的安価に堪能できるのです。
材木置き場にないものは前の年の冬前に注文すれば葉枯らししたものを翌夏には使用することができます。ですから、工事する前の年に設計図を完成させて、冬に木材を調達するのが達人の道です。

1号モデル1階トイレ

1号モデル1階トイレ

(4) 節だらけの家です
コストを下げる工夫のひとつが無節材にこだわらない家をつくるということです。柱などは二面も三面もの無節のものを求めようとすると、高価になるばかりでなく、芯去り材といって大径木の端の方の一部を使うことになります。強度的には芯持ち材のほうが強いともいわれています。
また無節の大きな梁などの構造材を見せようとすれば、大変高価なものになります。ですから、むく材をふんだんに見えるようにするには節が見えることを許容する必要があります。量産型の家は見た目に欠点がないようにしているため、構造材を殆ど見せません。見せる場合は「貼り物」を使う場合が多いと思います。
木材の角に大きな節があってそこから曲がってしまいそうな材料などは避けなければなりませんが、大工さんは節の少ない見た目の良いものから大事な部屋に使う気使いをしてくれますから、化粧構造材は一等材だけで充分だと思います。無節材と一等材では倍以上の価格の差がありますから、一等材でもすこし断面の大きいものを使えば安くてより丈夫な家を実現できます。
モデル住宅では、長尺物や断面を割り増しした杉の一等材を多用しています。ダイナミックな構造美と、がっちりした構造が実現しました。
壁板や床板なども指がひっかかるほどでなければ節があるのも風流といえます。棚板などはぬけ節といって少々穴があいていても、物が落ちなければ良いではありませんか。造作材も小さな節は許容して、いわゆる上小節というグレードのものを使えば、外材の無節や集成材の無節に価格的に対抗できると思います。当世の無節信仰は、マグロならトロしか食べないというようなもので、せっかくの森林資源を無駄遣いし、結果として世界中から高価なものを買い漁ることになっているように思えます。
モデル住宅でも、中央のホールの壁材は無節材を貼ってしまいましたが・・・・川崎町産の杉の端材だけでも数ある中から選べば、ある程度の数の無節材は揃います。

(5) 建材類も地元でつくります。
天井仕上げ材や、内外装材も杉板を地元で加工してつくります。モデル住宅の床材は杉の一等材を厚さ30ミリに本実加工したものを使いました。天井、内壁材は野地板と呼ばれる木材の端材の板材を本実加工したものを使いました。
大工さんがこの加工をするときは、溝を掘って、かんなを掛けてということを簡単な道具で何工程もかけておこなうので、高価な材料になってしまいます。
現在は、大量に生産できる設備を持った加工業者もいますが、やはり商品価値の高いものをつくろうとするので、きれいに揃ったものが多く、価格も坪当たり一万円前後するものが多いのです。そして、そういう加工業者さんたちは売りさばくのに苦労して、経営も厳しいところが多いようです。
川崎型では、建具職人さんが所有しているモウルダーという加工機械を利用して、本実加工用の刃を提供し、時間に余裕のあるときに加工してもらうようにしました。
材料は、製材所が端材を貯めておいたものですから、坪当たり五千円以下で直販してもらえました。販売コストなどを考慮しても、仙台までの商圏を対象に考えれば、悪くない副収入源になる可能性はあるし、消費者も安全な地元のムクの仕上げ材を入手する道ができると思います。
外壁は厚さ18ミリの杉板材の下見貼りです。
また、つくり付けの家具は、床板用に製材したものを建具やさんに、集積材に加工してもらい、その幅広の板材でつくりました。従って、一等材の節だらけの家具ですが、薬品処理も塗装もしていない家具でもあります。
浴槽も川崎町のヒノキ材を春に厚く木取って半年程自然乾燥させ、雇い実にて接いで角風呂を作りました。節はありますが市販品の半額以下でできます。
高価にはなりますが、無節の材料だけを使った家具をつくることもできます。
モデル住宅ではこれらの家具に単品の価格をつけて、家具として販売できるようにしたいと考えています。

(6) 基礎断熱をして床下オンドル暖房をしています。
モデル住宅では、基礎断熱をしたコンクリートのべた基礎工法を採用しています。
その上で床板に開口を設けて、室内空気と床下空気とを一体化させ、床下に単純な放熱器を置いて動力によらない自然な暖気の流れをつくり、床暖房と対流暖房の両方の特徴を併せ持った暖房形式を採用しています。いわば木造のオンドル式暖房とでもいえるものでしょうか。床板の温度をあまり上げなくて良いので、ムク材の床板を使うことができます。装置も単純なので坪当たり2万5千円程度で設置でき、床暖房としては低価格で済みます。但し、上手に自然な対流をおこすために、放熱器の位置と容量および上昇用開口と下降用開口の位置と大きさを計算する必要があり、経験豊富な方に設計してもらうのが無難です。

(7) 床下に木炭を敷いています。
そして、床下に大量の木炭を敷きこみ、循環する空気を清浄化させ、床下の湿度を調節しています。木炭には蟻に対する忌避効果があるといわれており、床下を乾燥状態に保てるので、土壌と水源を汚染し、住み手の健康障害も危惧される有機リン系の防蟻剤を使用していません。そのうえで、川崎町にも大量に植林され、その後利用用途がなく放置林となりがちな唐松材を土台に使いました。モデル住宅では、他にもヒノキや栗の土台も使い、腐れやシロアリ被害の経年比較調査を行います。
木炭も勿論川崎町産のものを使います。川崎町で木炭を生産することにより、広葉樹の里山を保育を可能にしたり、建築用材の先の細い裏材の利用を可能にしたりできます。その結果、水源をキチンと涵養できる森林が増え、有機リン系の汚染も避けることができ、釜房湖の水質も良くなることを期待しています。川下の方々も自分たちが飲む水をきれいにするためにも、大いに木炭を利用していただきたいと思います。
モデル住宅では川崎町の貴重な白炭も含め、総量2トンの木炭を敷きこんでいます
空気質の追跡調査も行うことになっています。

(8) 床下を更に利用しています
床下には、暖房設備、給排水設備の配管類を露出配管で設置しています。電気設備配管・配線も床下にメインルートを取り、ジョイントは床下で行っています。そして、6箇所の床点検口を設けて床下のすべてのところに行けるようにして、メンテナンスをし易い様にしています。このため木炭も麻袋に入れて、邪魔にならない位置に設置しています。新鮮空気の取り入れ口も基礎の立ち上がり部分にサーモフレッシュを設置して、新鮮空気が木炭の塊りを通過し、放熱器の暖気と混ざりながら室内に到達できるようになっています。

(9) 見てくれだけのためには手間をかけません。
川崎型は素材を加工して手づくりでつくるというタイプなので、手間はかかります。特に木工事の手間が大きな比重を占めます。しかし、単に労働賃金を下げるのでは後継者も育たず、結果として地域の木材を使う職人さんがいなくなってしまいます。
モデル住宅では、見てくれだけのためにかけていた工程をなくし、合理的に手間を少なくする工夫をしています。
まず、原則としてカンナをかけていません。安全の為に手の届く範囲は角面のみ手カンナをかけていますがその他は見え掛かり材もプレーナー仕上げのみとしています。和室の柱のみは比較のために手カンナを掛けていますが、床柱は製材所のバンドソーで挽いたままのケヤキを使っています。
また軒天も貼っていません。しかも化粧野地板も挽き立て材でプレーナーもかけていません。外壁材も手の届く範囲のみをプレーナー掛けとして、その他は挽き立て材です。カンナ掛などはオプション扱いとしたいと思います。
また、一般にプレカット工法にてきざむほうが手間が掛からず安く上がるとされていますが、産直材で長尺物を多用する場合は仕口の数が少なくなるので手加工のほうが安く上がる可能性があります。また材木を持ち込む場合も、プレカットは割高になるとも言われています。手加工で刻めば、ひとつの現場で長い時間働くことができるので大工さんは数をこなさなくても良くなり、住宅建設数が減少する時代にあっていると思います。
一般に構造材をあらわすと手間が多くかかるといわれますが、建ててしまえば枠材などは必要なくなるので、見てくれのための手間をなくせば全体としてはさほど手間が増えるわけではありません。木造の工法は特別な工法を採用せずに、それぞれの大工さんが手馴れた方法を大事に考えています。
板貼りも、フィニッシャーやビスを使って作業の効率を上げ、接着剤も使わずに全体のコストダウンをはかっています。(化学物質の使用を減らすことにもなります)
また、板貼り仕上げは、施主自ら施工できる方法なので、究極のコストダウンが可能です。希望者には電動仕上げのこぎりも貸し出す用意をしています。
屋根は瓦と板金葺です。瓦の棟には割のし瓦を使わず、丸瓦一段のみとしています。軒先にもいわゆる軒先瓦という役物瓦を使用していません。役物瓦を減らした結果かなり安価になり、重量も軽くなりました。更に全瓦釘打ち止めとして、耐震性を向上させています。板金葺き屋根は雪止め部分のみはステンレス製として屋根全体の耐久性のバランスを良くしています。川崎町は雪も多く、敷地には木が多く茂っていますので軒樋はつけず、雨落ち部分に砂利を敷き、古瓦ではさんでいます。
このように、見てくれより機能を優先するいわば質実剛健な家作りを目指しています。
(10) 塗装をしません。
原則として塗装をしません。外装の木の防腐塗料なども、毎年塗らなければ5年もすれば塗らないのと同じになるといわれています。土壁を保護するために貼られていた四分の板壁は何の塗装もせずに、真っ黒にはなりますが、50年以上はもっています。
モデル住宅は18ミリの杉板を無塗装で使っていますが、一部分に天然油製の輸入防腐塗料や柿渋などのいろいろな塗料を塗って経年比較をします。
室内も原則として塗装しません。水掛かり部分も、ケミカルな塗料は使わず、一部分にエゴマ油や胡桃油などを良く拭きこんだりして、比較します。
塗装代が一切掛からなくなるので最終コストは安くなりますが、希望する方にはオプション扱いで塗装して引き渡します。

(11) 板材以外の仕上げも天然素材です。
板材以外の仕上げも木摺下地の土壁やプラスターなどの左官仕上げや、石貼り、流しまわりのタイルなどのシックハウス規制対象品以外もので、かつ、地元の伝統的な職人さんにお願いできる仕上げにしました。
土壁は、土も支倉地区の粘土質の土を掘り出して、藁は完全無農薬栽培の田んぼで手刈りした稲藁を使い、練り方、寝かせ方、塗り方などの技術を後継者たちに伝授するプロジェクトとして行われました。

(12) ゴミが出ません。
モデル住宅では現場で出る廃材のほとんどが木で、それを薪ストーブの燃料に使い、断熱材の残りを天井上に置いたところ、その他の廃棄物は非常に少なくて、職人さんたちも驚くほどでした。元請が負担する廃棄物処理費は大幅に減少することになりました。この経費削減の成果は施主に還元できます。
また、モデル住宅の台所流しには、生ゴミのバイオマス処理機を設置しています。
かっこよいシステムキッチンも見方を変えれば、生ゴミ製造機でもあるわけです。
ただ一社のみ、ディスポーザーで生ゴミを粉砕した後に固液分離をして、固体を発酵菌の入った有機物に混ぜ、定期的に撹拌してゴミの総量を減らす装置のオプションをもっています。
但し、ゴミの総重量を減らすことを主目標にしているために、更に電気ヒーターで乾燥させるようになっています。モデル住宅の敷地には畑もありますから、堆肥に利用できる程度に発酵すれば十分なので、ヒーターのみを入り切りできるスイッチをつけてもらい、発酵菌や床になる有機物をいろいろ試してみることにしました。
その結果、家庭排水を浄化するための負荷も軽減できるかどうかの調査もすることにしています。

食事と住まい

食べるということは、蛋白質や脂肪を摂ったとか、何カロリー摂取したという言い方も出来ますが、私は命を戴いているとも言えるのではないかと思います。
生き物の生命力が自分の身体に入り、自分の生命力になる。人は生命と生命を育むものを食べて生きてきたのです。
しかし、今は生命でない物を食べるようになりました。また、生命であっても薬品を使って育てるために生命を害するものを一緒に食べています。見た目は良くても、生命力のないもの、食して害のあるものがあふれています。心と身体の健康が損なわれていることに多くの人が気づき始めていると思います。
そして、生命が生命を育むような育て方を忘れたために、農地は固く死んだ土になりつつあります。

人はわずか数万年前までは森に生きていました。そして、住まいを造るようになっても、生命と生命を育む素材を使ってきました。
白菜の根を切って秋に収穫しても腐らなければ春には新芽が出るように、お米が千年の時を経ても発芽するように、木はその根から切り離されても腐らない限りは生き続けています。
土や生きている木を始めとする生命力あふれる住まいに住んで生きてきたのです。
しかし、今は生命のないもので造った住まいに住むようになりました。木であっても、生命でないもので覆ったり、わざわざ細切れにして使っています。私は合板は生命ある木ではないと思います。
見た目は良くても、生命力のないもの、住んで害のあるものがあふれています。心と身体の健康が損なわれていることに多くの人が気づき始めています。
そして、生命が生命を育む森の手入れを忘れたために、経済的な理由で間伐を怠ったために、人工林には日が入らず死んだ森になりつつあります。
みやぎ版住宅川崎型は生命あふるる住まいを造ることが第一の目標です。
メーカーがあまりに毒性の強い農薬を作ったために、国は農薬の規制をせずにいられなくなり、人々は低農薬の農作物を求めるようになりました。しかし、どのくらいなら安全という保証はありません。
シックハウス症候群という住まいの存在自体が健康を損なう事態になり、国は建材の規制をせずにはいられなくなり、人々はF☆☆☆☆を謳う家を求めるようになりました。しかし、どのくらいなら安全という保証はありません。
今や、建材メーカーはこぞってホルムアルデヒトを吸収する建材を宣伝しています。サプリメントを食せよというようなものでしょうか。
みやぎ版住宅川崎型はムク材と土や漆喰などのシックハウス規制外品のみを使用する、いわば無農薬の住まいづくりを目標とします。
そして、みやぎ版住宅川崎型の普及により、住み手と里山に生命がよみがえるのが我々の願いです。

木材の値段その一「外材はなぜ安い」

ずっと昔から、外国産の木は使われていましたが、それは床柱などとして珍重されたもので、価格も非常に高価なものでした。
日本が戦後の高度経済成長期に入った頃から、安い輸入材が出回り始めました。それは、戸建て木造住宅が、大工さんばかりでなく、いわゆる住宅産業と呼ばれる企業群によって建設されるようになっていく時期と重なります。産業ですから量産によって、安くて消費者に喜ばれるものを造らなくてはなりません。量産によるコスト減の追及も必要ですが、原材料の木材も安ければ安いほど良いのです。開発途上国といわれている地域では、労働賃金が安いので、安い木材が供給できるといわれますが、材木のように大きくて重量のあるものを運搬するのは大変なエネルギーを要します。何故、それでも国産材より安くなるのでしょう。
貧困や金銭的な欲望の為に、その日の労賃を得るだけの価格で木材を売る国の人たちがいます。それが天然林であれば木を育てる費用はかかっていません。そして、日本の企業は切り出した後に再び植林をする費用もなしで大量に買いまくりました。わたしはかつてカナダで、島ごと原生林を切り出した跡を見たことがあります。勾配の急な島なので切り出した木を谷沿いに一気に海に下ろすことが出来ます。それを船ですくい上げて運搬するのでまことに生産効率は良い。しかし皆伐した後は新たな芽吹きを待たずに土砂が流出してしまい、黄色い島になっていました。
育つまでのコストも、次に育てるためのコストも支払わないから、我々は安い輸入材を手に入れることが出来たという面もあるのです。
日本の木は植林、育林の費用が価格に反映されていたために外材に太刀打ちできなくなりました。勿論、外国産の木でも植林された木も輸入されています。認証林制度の動きもありますが、それは盗伐された木もいまだに出回っている証でもあります。
日本人に向けられたエコノミックアニマルという批判はたんに「獣のように働く日本人」という意味だけでなく、「金のためには自然資源も平気で収奪する獣のようなやつら」という意味があるのだと外国の友人に言われたことがあります。安い外材とその加工品と量産体制を手に入れて、日本では見た目もよく、便利で、バラエティーに富んださまざまな住宅をたくさんの人々が手に入れることができるようになりました。
しかし、一方で世界中に森林破壊をもたらし、足元の森林を荒廃させてきてしまったのだとも思います。

木材の値段 その二 国産材はなぜ高い?

国産材のムクの木の家が良いんですよ、というと殆どの人が「我々には手が出ませんものね」とおっしゃいます。国産材のムクの木の家は高価なものというイメージがありそうです。
日本は急峻な山が多いので国産材は外国産材に比べて切り出しコストがかさむといわれています。流通過程でのコスト削減の努力も業界全体として取り組む必要があると思われます。しかし他にも国産材が割高になる要因があります。
じつは木材はものによって価格が大きく違います。柱一本で数万円するものもありますし、大根一本の値段にもならないと嘆く林業家もいます。雑木林にはいくらでもありそうな曲がった柱が何十万円もしたりします。このような銘木と呼ばれる高級材木は別としても、節のない柱と節のある柱とでは、数倍の値段の差があります。日本には大径木が少なくなっており、無節材となれば大径木の輸入材からとるほうがずっと安くなる傾向があります。
江戸で大火があると木材が暴騰して暴動がおきたといわれるように、木材はもともと投機性の高い商品のひとつでした。秋田杉の四方柾や北山杉の絞り丸太や屋久杉の玉杢天井板などとブランド化して高価なものをもてはやす風潮もあります。最近は輸入ざれた無節材にピカピカの表面加工をした高級木質建材と称するものを使用した高価なムクの家も出回っています。
このような高級材と称するものにとらわれず、身近な山の、節のある材料を、塗装なしで上手に使うことにより、国産のむく材をふんだんに使った家でも建設費を低く抑えることができる可能性があると思います。
また、かつては柱などの構造材を切り取った残りの部分は、造作材などを取ったり、あまり良くない部分も板材にしたりして余すところなく使っていましたが、合板の普及などにより板材は使われなくなり、産業廃棄物になる部分が増えてしまいました。建築用材として使えない枝や葉もかつてはたきつけなどに使われ、お金にはならなくてもその地域での生活の糧としてあますことなく使われていたのです。しかし今はそれらは産業廃棄物として経費をかけて処分する羽目になっています。また育林の過程で生じる間伐材もかつては杭や養殖筏などに使われていましたが今では用途がなく、山に投げ捨てられたままです。
このようなコストを全て建築用材の価格におわせなければいけなくなり、割高にならざるを得ない面もあると思います。建築用材の歩留まり、ひいては森林活用全体の歩留まりを良くしてコストを下げる工夫も必要ではないかと思います。

原田 有造

川﨑町の森林の現状

日本全国に共通したことでありますが、川﨑町においても人工林と里山は荒廃しつつあります。
戦後、国や県をあげて針葉樹の植林を推奨しました。川﨑町にも宮城県の職員が数名常駐して次々と人工造林の適地を探し、多くの町民が未来を夢見て植林作業に参画しました。特に当時は唐松が推奨され、川﨑町の山は杉と唐松林に変わっていきました。
しかしその後情勢は変わり、外国産の安い木材が大量に出回り、木材価格は低迷し、間伐材の需要もなく、唐松に至っては成長後の需要も期待できないため、経済的な見通しが立たずに多くの林業家は保育作業を続けることが出来なくなりました。
国の森林開発公団、現在の独立行政法人緑資源機構も宮城県の林業公社も同じ道をたどりました。
その結果、間伐が出来なくなったために、日も差さず、頂部の一部にしか葉がない枯死寸前の針葉樹林が増えてしまいました。このような針葉樹林は林床に多様な植物が繁茂しないために、水源涵養と言う意味では禿山に等しく、山崩れなどの災害も起こしやすい山になりつつあります。
広葉樹林も薪炭の需要の低下などにより、伐期を迎えても間伐をして利用しなくなったために、整備された里山とは言えない状況になりつつあります。
最近は国も危機感を持ち、間伐をするための補助金が交付されたり、環境税の導入が検討されたりして、公的な資金による山の手入れには少し明るさが見えてきましたが、一方でやはり山の膨大な資源を利用して経済的にも成り立つようにすることや、山の恵みを享受する人間と森林の多様な関係を再構築することも必要であると思います。
豊かな国土を子孫に伝えるために、国産材・地元材を愛用し、間伐材なども有効に利用する知恵と工夫と努力とを、全ての国民が共に考えなければならない時期にきているのではないでしょうか。

川﨑町森林組合組合長 斎藤 勝彦

手入れされた杉林

手入れされず死にかけている杉林